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スリー・ビルボード

  • 原田崇央
  • 2018年2月3日
  • 読了時間: 2分

アカデミー作品賞にノミネートされている「スリー・ビルボード」を見た。シャンテがメイン館のいわゆる賞レース映画がTOHOシネマズ錦糸町で上映されるとは思わなかった。

個人的にはMe Too運動やBlack Lives Matter運動など、反トランプ政権に結び付けられる女性や黒人の権利を主張する動きが過度になりすぎて、そういうメッセージを持った作品ばかりが評価される最近の米国の芸能界の風潮は好きになれない。自分たちが望まない大統領が誕生したから、そのストレス解消でやっているようにしか思えない。

この作品も黒人の行動に過剰な反応を示し、メキシコ人を侮蔑する警察という権力に、女性が立ち向かう話で、その表面的な部分はまさに、Me Too運動やBlack Lives Matter運動と呼応する作品であり、時代性のある作品だと思う。

でも、本作がアカデミー作品賞を受賞すべきだと思う点は、そういう反トランプ時代を映し出したという部分だけではない。主人公は権力に立ち向かうが、Me Too運動やBlack Lives Matter運動を行う人々のような偽善者ではない。はっきりと、黒人や障害者など、いわゆるマイノリティーとされる人物を見下す態度を見せているし、男全員の血液検査を行えなどの独裁的な発言もするし、明らかな犯罪行為も行っている。

また、娘がレイプされ殺害された事件の捜査を進めない警察署長は主人公から見れば悪人かも知れないが、過度な運動で署長を追い詰め自殺させた主人公は、署長の家族から見れば悪人である。このように、誰も完全な正義を貫いているものなんていない。つまり、主人公に感情移入させないつくりも見事だと思う。そういう意味では、これは、警察による黒人に対する過剰な行為が問題化して以降、やたらと賞レースで評価されている人権もの系映画とは一線を画していると思う。

話はそれるが、個人的には警察による黒人に対する過剰な行為に対して、警察を批判し、黒人を擁護しなきゃいけない風潮も好きになれない。警察による過剰な暴力が起きたケースの多くは黒人の問題行動(はっきり言えば犯罪行為)が原因である。勿論、彼らの行った犯罪は死に値するものではないが。なのに、警察ばかりが批判されるのはアンフェアだと思う。そういう偽善的な部分が本作にはないのが好感を持てる理由だと思う。

最後に本作の評価すべき点をもう1つ。実に音楽の使い方が上手い。レイプされ殺害された娘の部屋にニルヴァーナの“ラスト・アルバム”となった『イン・ユーテロ』のポスター(ジャケ写)が貼ってあった。このアルバムに「レイプ・ミー」という曲が収録されているのを知った上で使用したに違いないと思う。


 
 
 

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