ゲティ家の身代金
- 原田崇央
- 2018年5月26日
- 読了時間: 3分
酷い邦題だな。ちなみに、原題はオール・マネー・イン・ザ・ワールド。まぁ、原作ノンフィクションの邦題に合わせたらしいが、原題の方が作品の内容に合っていると思う。 それにしても、リドリー・スコット監督は巨匠クラスなのに、2010年代に入って、毎年のように新作を発表していて、すごいよな。2010年以降では7本目の監督作品だからな。まぁ、スティーヴン・スピルバーグも2010年以降、監督作品を7本発表しているが…。 あまりにも、監督作品が多いので、ここまで面白いリドリー・スコット監督作品って、久々じゃない?って一瞬、思ってしまった…。よく考えたら、「オデッセイ」というアカデミー作品賞にノミネートされた傑作が数年前に発表されていたのに、それを忘れそうになるくらい、作品が多いからな…。 そして、1970年代の話になのに、原油価格の問題とか、過激派勢力による拉致とか、金を儲けているのに社会に回さない金持ちとか、酷い報道をするマスコミとか、中東情勢とか、現在の話にしか思えないなと思った。 そういえば、スピルバーグも最近、70年代の実話をもとにした「ペンタゴン・ペーパーズ」という作品を発表しているが、「ゲティ家」、「ペンタゴン」両方に、風で新聞が飛ばされるシーンがあるのは単なる偶然なのだろうか?70年代は新聞の時代ってイメージなのかな? 本作は、MeToo運動の中心的な悪役であるケヴィン・スペイシーが、石油王役で出ていたために、出演シーンを全部、別の役者で短期間で撮り直したことでも有名だが(こんなことやるのは、前は日本だけと思っていたが、最近は米国の方が過剰な気がする)、全然、急造した作品に見えないのはすごい。代役クリストファー・プラマーの出演シーンって、様々な時代の様々なロケーションであるのに、よく短期間で撮れたなと感心する。結局、映画の制作って、撮影や編集よりも、準備段階が大事ってことなのかな?脚本やコンテ、演出、演技プラン、カメラワーク等、段取りがきちんとしていれば、撮り直しは大したことないってことなのかな? ただ、MeToo運動に同調し、悪役を排除したにも関わらず、撮り直しの際のギャラが男優と女優で格差がありすぎというのが発覚し、MeToo運動に同調したのは、形だけってのがバレてしまったけれどね。結局、ハリウッドから差別とか格差とかそういうものはなくならないってことなんだろうな。 ところで、スコット兄弟といえば、「トップガン」や「ビバリーヒルズ・コップ2」のせいで、弟の故・トニー・スコット監督の方が、音楽に強いイメージがあるが、何気に、リドリーの方も音楽の使い方がうまいんだよな。本作もストーンズやゾンビーズから、クラシック的な楽曲、ワールド・ミュージックなどと実に幅広い音楽を効果的に使っているし。 とりあえず、本作を見て、ゲッティイメージズの画像を集めて提供するというサービスは、本作に登場する石油王、ゲティ・オイルのジャン・ポール・ゲティが節税対策で美術品を収集していたことがルーツなのではと思った。それから、ゲティ・オイルやジャン・ポールの表記、そして、本作の邦題などはゲティなのに、ゲッティイメージズの表記は何故、ゲッティなの?と思った。同じ一族なのに…。

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