ファントム・スレッド
- 原田崇央
- 2018年6月13日
- 読了時間: 4分
アカデミー作品賞にノミネートされた「ファントム・スレッド」を見た。 何でもかんでも、反トランプにつながるような作品ばかりが評価されがちな最近の米国のエンタメ系の賞だが、この作品は唯一、第90回アカデミー作品賞にノミネートされた9本の中で、反トランプに結びつかない作品だと見る前は思っていた。 ファッション・デザイナーの話だし、デザイナーは同性愛者でもなければ、有色人種でもないし、政治的な活動をしている者でもないようだし。
他の作品賞候補の8本をジャンルとかテーマ、キーワードで分類すると、 「ダンケルク」戦争 「ゲット・アウト」黒人差別 黒人監督 「スリー・ビルボード」女性の自立 黒人・障害者差別 女性の性被害 警官の黒人に対する過剰な反応 「シェイプ・オブ・ウォーター」女性の自立 障害者・同性愛者などマイノリティー差別 政府の極秘研究 冷戦 メキシコ人監督 「ウィンストン・チャーチル」戦争 分断する政治 右傾化する国民 「ペンタゴン・ペーパーズ」政治スキャンダル 反政権的マスコミ 「君の名前で僕を呼んで」同性愛 「レディ・バード」女性の自立 女性監督 って感じだからな…。
不出来とは言わないが反トランプに結びつけられる作品ばかりで本当、あきれてしまうが、こうした異常な状態の中、「ファントム・スレッド」は何で候補入りしているのか不思議で仕方なかった。
でも、見たら分かった。これも、女性自立系の映画だった。仕事に没頭すると、恋人・妻を無下に扱うデザイナーの姿、そして、彼に復讐?する女性の姿は、ここ最近、ハリウッドで次々と大物を失脚させているMeToo運動にもつながると思った。
それにしても、前半は驚くほど退屈だった。撮影・衣装・美術・音楽は美しいし、演技は素晴らしいのだが、本当、単調。このままなら、今年のワースト洋画は決定だなと思った。
でも、後半に突入すると、何かおかしいぞ、この映画って雰囲気が漂ってきて、それからは、結構、楽しめた。 まぁ、ネタバレ厳禁映画とか大どんでん返し映画とまでは言わないものの、余計な情報がない方が楽しめるのは間違いないから、女性の自立系映画って情報があまり流れなかったのか…。(この文章はネタバレか?)
クレジット上ではダニエル・デイ=ルイス主演となっているが、実際は、そうとは言い切れない展開だしな…。ヒロインの回想的なストーリー展開を考えれば、ヒロインが主役とも言えるからな。ただ、回想部分の出だしはデイ=ルイス主語で進行しているんだよな…。まぁ、いいか。そういえば、「ギャング・オブ・ニューヨーク」はどう考えてもレオ様主演映画なのに、賞レースでは、デイ=ルイスが主演にされていたな…。
ところで、この作品、食事シーンとかのノイズの使い方がうまかったが、何でアカデミー賞の音響系の賞(録音賞、音響編集賞)にノミネートされていないんだ?そういえば、同じく作品賞候補の「ゲット・アウト」もノイズの使い方が素晴らしかったのに、無視されていたな。何か、音響系の賞で候補になるのは、作品賞にノミネートされるような作品では歴史ドラマとか戦争映画だけで、あとは、SF・アクション系って感じになっている気がする。アート系の作品とか、ホラーやコメディなどこじんまりした作品は無視されている気がする。何だかんだいって、どの分野にも評価されない作品=差別や偏見はあるってことだな。
それはさておき、退屈に感じた前半はほぼ、音楽が鳴りっぱなしだったが、ラジオ頭のジョニー・グリーンウッドがやっているとは思えないほど、ほとんどクラシック音楽って感じの曲だったのには、ちょっと驚いた。しかも、室内楽的だし。作品の内容考えれば、不協和音というか前衛的でもおかしくないのに、そうにもなっていないからな…。
以下脱線
スリップ?キャミソール?50年代って時代背景的からすると、シュミーズって言い方がピンと来るような気もするが、とにかく、そんな格好で寸法をとられているヒロインの乳首が透けて見えるのが微妙にエロい。
下ネタをもう一つ
料理のシーンで、卵とバターを絡めるカットがあるが、これって、多分、セックスのイメージだよね…。
追記
シネスイッチ銀座で映画見たの何年ぶりだろ?しかも、上の階の方のスクリーンってなると、いつ以来だ? それだけ、シネスイッチに行かなくても、ミニシアター系の映画をシネコンで見られるようになったってことなんだろうな。 ミニシアター系映画ってジャンル分けはもう必要ないんじゃないのかな…。
(※画像はシネスイッチで撮ったものではありません)

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