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カメラを止めるな!

  • 原田崇央
  • 2018年8月23日
  • 読了時間: 6分

「カメラを止めるな!」拡大公開バージョンを見た。まぁ、拡大公開バージョンといっても、頭にアスミック・エースのロゴがつき、エンドロールに例の週刊誌やワイドショーでネタにされている著作権問題に関したクレジットが追加されているくらいだが。アスミックのロゴや原案のクレジット追加だけで、内容が変わらないものをわざわざ見る必要があるのか?著作権問題でモメている作品を金を払って見るということは、儲けさせてはいけない人間を儲けさせることにつながるのでは?などと考え、見ることを迷ったりもしたが、見たい映画が山ほどあるのに、何故か時間が合うのが、これしかなく、とりあえず、話題のニュースの勉強?も兼ねて再鑑賞することにした。

パクリ・盗作・著作権侵害というものなのか、それとも、参考・引用・オマージュというレベルなのかはともかく、宣伝文句や報道でよく言われている、37分ワンカットって部分は、元となったとされる舞台ではどうやっても、できないことであり、この部分が本作の評価の大きな要因の一つであるのだから、パクっていようが、いまいが、映画としての評価を下げる必要はないというのが再鑑賞した感想かな。ただ、この騒動により、キネ旬ベスト・テンとか日本アカデミーとかで評価されるのは難しくなった気がする。

とはいえ、この映画の関係者が著作権的なことに疎すぎるのは否定できないと思う。ここ数日、報道されているストーリーとか設定の問題以外にも、主題歌だって、パクリ・盗作と言われても仕方ないしね。というか、ストーリーや設定の問題は、グレーな部分もあるが、主題歌に関しては、音楽的知識がある人間だったら、誰でも、ジャクソン5のパクリだよね!って思うはず。

元々、本作は、ワークショップの卒業制作的な作品だから、著作権に疎いのは当たり前といえば、当たり前なんだよな。著作権関連に回す予算なんてないし、スタッフ・キャストのギャラも、超お友達価格みたいなものなんだろうから。卒業制作なんて、普通は関係者しか見ないし、せいぜい、それにプラスして、招待された業界関係者や批評家、マスコミなんかが見るくらい。一般上映されても、一部の映画マニアやサブカル好きが見るくらい。だから、著作権関連に関する諸々もきちんと、やれるワケがないしね。

本来なら、キネ旬とか映画秘宝とかCUTとか、その辺の雑誌が好きそうな連中(自分含む)だけが喜ぶような作品だったのに、著名芸能人が絶賛し(中にはさっしーのように映画に興味を持たない人もいる)、映画専門でないメディア(特にワイドショー)が騒いだので、映画マニアやサブカル系以外にも注目されてしまったからな。それで、当然、大きな金も動くようになってきたから、こういう騒動になるのも当然といえば、当然なんだよな。

今回、問題になっている「カメ止め」騒動では、映画の製作サイドが、金銭的・契約的な話どころか、いわゆる仁義を切ることすらしていないのは容易に推測できるが、舞台作品からインスパイアされたことは認めている。というか、問題にされる前から公言していた。となると、パクリとは言えないよなと思う。

ただ、元ネタがあり、類似箇所が多いのに、オリジナル作品だと主張する製作サイドは何か違うよなとも思う。

また、元ネタとされる舞台の演出家は、原案ではなく原作とクレジットしろと言っているが、設定や台詞に類似箇所が多いとはいえ、キャラクターは異なるし、そもそも、こういう二重構想・三重構想の作品はいくらでもあるから、原作と言い切るのは無理があると思う。

それにしても、オリジナルとは?原案とは?原作とは?パクリ・盗作とは?その定義は何?って思う。クエンティン・タランティーノなんて、自分が好きな映画へのオマージュしまくりなのに、アカデミー賞のオリジナル脚本賞を2度も受賞しているからな。

逆にスパイク・ジョーンズ監督の「アダプテーション」なんて、蘭コレクターについてのノンフィクション本に登場する人物を好き勝手な設定に変えた上に、メインとなるストーリーは蘭コレクターではなく、ノンフィクション本の脚色化に悩む脚本家の話になっているのに、アカデミー脚色賞にノミネートされているからな…。つまり、ノンフィクション本の映画化という扱いになっている。

日本だと、こういう問題で「ライオン・キング」はディズニーが手塚治虫の「ジャングル大帝」をパクった作品だって言いたがる人が多いと思う。でも、手塚はそもそも、ディズニーのパクリのようなことをやっていた人だし、動物の世界を人間社会的に描くのは手塚がデビューする前にディズニーがやっていたことだからね。さらにいえば、「ライオン・キング」は「ハムレット」との類似性も指摘されるというか、ディズニー側がそう発表しているが、ウィリアム・シェイクスピアのクレジットがあるわけでもないしね。つまり、「ライオン・キング」のストーリー展開はよくある話ってことでしょ。

「カメ止め」の元ネタとされる舞台の演出家の意見を尊重すれば、タランティーノの作品なんて、何十作品もの原作付き映画になってしまうし、「ライオン・キング」のように家族内での血の争いが描かれた映画は全て、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲「ハムレット」に基づくというクレジットが必要になってしまうと思うんだよな。逆に「アダプテーション」なんて、オリジナル作品でもいいと思うのだが…。

それにしても、平日朝の会なのに、結構入っているな。ワイドショーで報道された盗作騒動が宣伝になっているんだな。

あと、前にインディーズ・バージョンを見た時は80席程度のミニシアターでの鑑賞だったが、今回はこの時の4倍近い座席数のシネコンでの鑑賞となった。インディーズ作品だけれど、シネコンの整った設備で見ても、結構、音響的・映像的に楽しめた。というか、明らかにシネコンの設備で見た方が臨場感を味わえた。つまり、製作費は安いし、権利処理はいい加減だけれど、きちんと、映画として作られていたってことだよなと再確認した。

ところで、実は、元ネタとなった舞台の演出家に取材する機会があったのだが、世間で言われているような金目当ての人物には見えなかった。というか、肩書きは公表しないでくれと言われたので明かさないが、この映画から得る利益程度で騒ぐ必要がないほどの肩書きを持っている。つまり、金はあると思う。それに、腰も低かった。ということは、今年を代表するエンタメ作品の元ネタは自分なのに、自分の名前が軽んじられているのが納得いかないってことなんだろうな。

そういえば、金といえば、監督・キャストも、元ネタとされる舞台の演出家も儲けていない気がする。監督・キャストは映画のプロモーションを兼ねての出演だし、元ネタの演出家は自分の主張を述べるための取材対応だから、どちらも、ギャラらしいギャラが発生していないんだよな。儲けているのは誰?ってなると、話題になったからということで、配給や興行に乗り出してきたアスミックやTOHOシネマズなのでは?

とりあえず、まとめると、本作のゾンビ映画ヒロインは可愛い。というか、ポニテ・ノースリーブ・血糊という組み合わせが萌えポイントでたまらない。本来、この「カメ止め」って、そういうことを言っているような連中向けの映画なんだよな…。


 
 
 

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