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グリーンブック

  • 原田崇央
  • 2019年3月2日
  • 読了時間: 5分

アカデミー作品賞を受賞した「グリーンブック」を見た。 「良い曲が使われていても、クソな映画は山程あるが、音楽の使い方がうまい映画に駄作はない」というのが持論だが、まさに、その通りの作品だった。

まぁ、本作のピーター・ファレリー監督の代表作「メリーに首ったけ」も音楽の使い方がうまい映画だったしな。それにしても、ザ◯メン・ヘアジェルとかをやっていた監督がアカデミー作品賞を受賞するようになるとはね…。

スパイク・リーは本作の作品賞受賞でガタガタ文句を言っていたが、彼が典型的な自分勝手な米黒人、というか、単に自分が受賞できなかったからイチャモンつけていただけというのがよく分かるほど、きちんと、米社会の差別の実情を描いている作品だった。

そもそも、本作の製作総指揮にはオクタヴィア・スペンサーがクレジットされているし、ピアニスト役のマハーシャラ・アリは助演男優賞を受賞しているしね。

まぁ、監督も脚本もプロデューサーも主演も白人じゃないと気にくわない米黒人は多いからね。白人監督の作品には、黒人の扱いが酷いとか、さんざん、文句言うくせに、黒人監督の作った作品って、映画でもMVでも、不自然なほど、黒人以外の出番が少ないくせによく言うよって感じ。企業の社長も、学校の校長も、何もかも黒人だったりするしね。 だから、白人監督で白人のマネージャー兼ドライバー兼用心棒役が主演になっている本作が気に入らないんだろうね。

黒人ピアニスト視点だったら、もう少し、連中の文句もトーンダウンしたのかもしれない。

そして、多分、スパイク・リーを始めとする、文句を言っている連中が気にくわない理由の一つではと個人的に感じているのが、黒人を単なる差別の被害者ではなく、彼等自身も差別する側であるというのをきちんと描いていることかもしれないなと思った。

メインの2人は、イタリア系とアフリカ系(黒人)と、ともに、米社会では、底辺的扱いの人たち。 でも、イタリア系の用心棒は、作中では、黒人やアジア系、ドイツ人などに対して、差別や偏見に満ちた言動を見せるし、黒人に対する差別が薄まってきてからも、半分ニ◯ーと呼ばれて怒り狂ったりする。これって、日本でも、「私は差別やヘイトスピーチが嫌いだ」と言う人が、ネトウヨみたいな連中から、在日と呼ばれて怒るのと一緒だよね。コリアン扱いするなって言っている。つまり、コリアン差別撤廃を訴えている人間がコリアン差別していることになるんだから。

一方、黒人ピアニストの方も、同じ黒人でも、白人の運転手をやっているような人など、下層階級の人間を見下しているし、自分は音楽教育を受けたエリートだという意識から来るのか、同じ黒人アーティストなのに、リトル・リチャードとか、チャビー・チェッカー、アレサ・フランクリンなんかを聞くような人間は低俗と思っていたりするし、自宅では、インド系っぽい執事みたいのを雇っている。(米黒人がアジア人を下に見ているのが、よく分かる)

また、黒人が経営するバーに、この2人で入った際に、黒人の客たちは、白人を白い目で見ると同時に、スーツを着た黒人エリートに対しても、お前はよそ者だみたいな態度を取る。

そういう、差別される者も、差別する側になるという部分を描き、単なる、綺麗事の人種融和モノにしていないのには感心する。

よく考えると、前年度の作品賞を受賞した「シェイプ・オブ・ウォーター」や直前まで本命視されていた「スリー・ビルボード」も似た要素を持っていたよな。

反トランプ一色のハリウッドでは黒人や女性、同性愛者、障害者、外国人の権利主張を訴えた作品を評価しなきゃいけない風潮がある。そんな中、表面的にはそういう主張に沿ったように見えて、実はその矛盾を描いているといった感じの作品に賞を与えているのは、ちょっとした映画人の反抗なのかもしれない。

あと、あまり、触れられていないが、同性愛差別も描かれている。そりゃ、今のポリコレ、反トランプにつながるような作品ばかり評価される米エンタメ界で賞レースを賑わす作品になるのは当然だよなと思う。 それにしても、マハーシャラ・アリ、また、同性愛モノに出ているんだな…。

そして、音楽の使い方は本当にうまい。 黒人一般市民のたまり場となっているバーでクラシカルな演奏をし、その演奏の素晴らしさで客たちを圧倒させる場面とか泣けるし! あと、本作で描かれた黒人と白人コンビの米南部ツアーのきっかけを作ったのが、ナット・キング・コール(実話ベースだから、ネタバレにはならないでしょ!)というセリフがあるが、ラストの主人公の家庭で行われるクリスマス・パーティーのシーンで、きちんと、ナット・キング・コールの「クリスマス・ソング」が流れるのも泣ける!

この前のクリスマス・シーズンに、この曲、全米チャート11位まで上がるリバイバル・ヒットになったけれど、結構、この映画もそれに貢献したような気がする。

というか、この映画、クリスマス映画だったんだな。年末に見たかった…。賞レースの有力作品だから、日本公開はこの時期になったのだろうが…。

ところで、実話ベースだから仕方ないのかもしれないが、作中で触れていた黒人ピアニストと兄との不和に関する続報が何もないまま、終わるのはどうなのよ?とも思った。

それから、石、返してなかったのか?気づかなかった。てっきり、返したように見えたのだが。まぁ、その確認だけのために、もう一回、劇場に行く気はないが。

追記 奈津子の翻訳、相変わらず笑ってしまう。 ピアニストの話なのに、歌うってなんだ? あと、この人、よく全然訳してないことがあるが、今回はミスター付けってのが出てきたぞ!さん付けだろ! おじ貴って、字幕も久しぶりに見た。まぁ、これに関しては、作品の時代背景に合っている気はするが。


 
 
 

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