バンブルビー
- 原田崇央
- 2019年3月23日
- 読了時間: 4分
80年代音楽を(主題歌は主演女優が歌う新曲だが)を多数使用した「バンブルビー」と、90年代音楽(70年代、80年代の曲も混じっているし、キャストが劇中で歌う曲は60年代の作品だが)を多数使用した「キャプテン・マーベル」を続けて見た。
ネットの世界では、懐かしネタを使った映画やドラマなどを、おっさん(おばさん)ホイホイと揶揄気味に呼ぶが、ハリウッドですらも、映画館で映画を見させるために、中高年に媚びを売らざるをえない時代なんだなというのを実感する…。
ある意味、ネット配信を主たる目的で発表された映画がアカデミー賞候補になることに疑問を呈したスピルバーグ監督の発言とも表裏一体な気がする。
結局、若者を中心に映画館で映画を見る、テレビでドラマを見るといった行動は失われている。彼等は配信で見る。映画館で金を落としてくれるのは中高年。だから、彼等が好きそうな要素を作品に織りこもうってことなんだろうな。
映画マニアである以上に音楽マニアである自分としては、どちらも見逃せない作品だが、見終えた感想は全く異なってしまった。音楽への愛情、ネタとした時代のカルチャーへの愛情が感じられたのは「バンブルビー」の方で、「キャプテン・マーベル」の方には、そういうのは感じられなかった。
「バンブルビー」は、面白かった1作目の「トランスフォーマー」が戻ってきたって感じだった。1作目も音楽の使い方うまかったしね。その後、「トランスフォーマー」シリーズは無意味に上映時間が長いだけの作品になってしまい、2作目はラジー賞作品賞を受賞したし、ケン・ワタナベが声の出演をしていた4作目なんて、夜勤明けで見たってせいもあるが、やたらと長いバトル・シーンが続くおかげで、自分の見ている映像が、睡魔からくる幻想なのか、実際に映されたものなのか分からなくなったほどだったしな…。まぁ、5作目は久々に面白いと思ったけれど…。
それで、話は戻るが、かける曲にもきちんと意味があってうまいんだよね。ボン・ジョヴィ「夜明けのランナウェイ」なんて、バイト先でミスをした主人公が逃げたくなるシーンにかかるし、主人公が(実はトランスフォーマーの)車を手にして気分がたかまっている時にスティーヴ・ウィンウッド「ハイヤー・ラヴ」がかかるし、トランスフォーマーの自動運転で(「タイタニック」のレオ様みたいに)世界の王様気分になった時にはティアーズ・フォー・フィアーズの「ルール・ザ・ワールド」がかかる。さらに、警察の追跡を逃れるシーンには、サミー・ヘイガーの「非常のハイウェイ55号」。曲を知っている人なら納得の使われ方が満載!
そういえば、最近、a-haの「テイク・オン・ミー」を使う映画多いが、本作にも使われていた。あと、最近、ディズニー映画「シュガー・ラッシュ:オンライン」で使われていたリック・アストリー「ギヴ・ユー・アップ」がこの作品でも使われていた。
主演女優が主題歌を歌っているってのも、80年代の日本のアイドル映画っぽくて良い。アイドル映画っぽいっていえば、一日に何回着替えんでだよ?ってくらい、衣装チェンジが多かった。まぁ、ほとんど、ロックTだけれど。
それから、スピルバーグ監督の「E.T.」っぽい展開も80年代要素かな。異星人を大人から守る若者ってストーリーだしね。さらに、エンド・クレジットには、あの指をくっつける仕草っぽいイラストが出てくるし…。まぁ、本作含めた「トランスフォーマー」シリーズはスピルバーグ製作総指揮だから、別におかしくもなんともないんだけれどね。
あと、主人公の弟が空手をやっているのも、「ベスト・キッド」っぽいし、80年代って感じはする。まぁ、日本やアジアの色んな文化を混同している節はあるが…。というか、本作のトラヴィス・ナイト監督は「KUBO」でも勘違いした日本・アジアを描いていたし…。でも、愛は感じるから良いんだけれどね。アジア趣味といえば、トランスフォーマーのバトル・シーン、カンフー映画みたいだったし、主人公がクレーンで危機一髪になるところなんて、ジャッキー映画っぽかったよな。
ところで、主人公の家に、プリテンダーズのポスターが貼ってあったが、これって、作中でネタにされている映画「ブレックファスト・クラブ」の主題歌をシンプル・マインズが歌っていたのとかけているよね?(この主題歌「ドント・ユー」の本作での使われ方もサイコー!トランスフォーマーと主人公の別れのシーンで、自分のことを忘れないでって歌詞が流れるしね)ちなみに、プリテンダーズのクリッシー・ハインドと、シンプル・マインズのジム・カーは結婚していたこともある。
まぁ、本作の唯一の不満は、今のポリコレに合わせて人種や性別に配慮している点かな。80年代の話なのに、白人の可愛い女の子の恋の相手が黒人だからな。

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