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バイス

  • 原田崇央
  • 2019年4月13日
  • 読了時間: 5分

アカデミー作品賞にノミネートされた「バイス」を見た。

タイトルのバイスは、バイス・プレジデント(副大統領)のことだというのは、英語や海外ニュースの知識がちょっとでもある人間なら分かることだが、見る前はイマイチなタイトルだと思っていた。

でも、実際に見てみたら、このバイスというのは、「マイアミ・バイス」でおなじみの方のバイス(悪)とのダブル・ミーニングなんだと分かり、良いタイトルだと思った。

本当、ディック・チェイニーは狡猾というか腹黒いというか、そういう類の人間に描かれていた。

あと、ラムズフェルドが酷い奴だけれど、面白い人物として描かれていた。

それから、パウエルはそっくりだったな。人気を利用されている哀れな人的描写が面白かった。

ライスもそっくりだが、作中ではほとんど見せ場がなかった。

息子ブッシュがやけに若くないか?というのはちと気になったが…。

とりあえず、今挙げたような人物に対して、知識がある、興味がある人は見て楽しめると思う。結構笑えるし。そういえば、ゴールデン・グローブ賞はミュージカル・コメディ部門の方で作品賞候補になっていたっけ…。

そして、この作品、メタ構造なのも面白いと思った。実話を基にした作品で、冒頭とかエンディングに本人の映像が出てくるというのはよくあるが、これは、途中で実際のニュース映像が出てくるんだよな。

それ以外にも観客に呼びかける狂言回し的キャラクターが出てきたり、ニュース・キャスターが観客に説明するみたいなシーンがあったり、登場人物が突然、シェイクスピア劇調なセリフを言ったり、途中で映画のエンディングでよくある登場人物のその後の人生のスーパーが出てエンド・クレジットが流れ出し、待て、これで終わりじゃないみたいな感じで続いたりとか、色々と面白い演出をしていて、単なる実話映画化作品になっていないのも感心した。

感心したといえば、この手の作品だと、いかにもハリウッド的な共和党批判、現在でいえば、反トランプにつながる作品に思われるが、きちんと、リベラル批判もしているのも良く出来ていると思った。そういう、右も左もきちんと批判し、単なるトランプ批判に終始していない点は、今回のアカデミー作品賞を受賞した「グリーンブック」や作品賞候補の「ブラック・クランズマン」にも通じる。

今のハリウッドは反トランプ的姿勢を見せないと村八分的にされる嫌な雰囲気が漂っているが、多くの人は反トランプのフリをしていても、そういう作品ばかりが評価される風潮に嫌気がさしている人も結構いるんだろうな。だから、表面的には反トランプでも、よく見ると、リベラルの問題点も指摘している作品が増えてきたんだろうなと思った。

そういえば、メタ構造的な演出のシーンで、一般市民が議論するというのがあったが、政治批判するとリベラル扱いされると怒る人がいたのが面白かった。米国も日本と同じなんだな。日本だと、左翼とかパヨク扱いされたくないから、政治の話をしない、政治家の批判をしないっていう人多いもんな。それが、悪政を蔓延させる原因なのに。

自分みたいに与野党問わず批判する人は理解されないんだよな。ネトウヨには、パヨク扱いされるし、パヨクにはネトウヨ扱いされるからな…。

ところで、オープニング・タイトルのクレジットが主要キャストと、監督兼脚本の名前しか出なかったが、これって米国映画では珍しいよな。

というわけで、この「バイス」の鑑賞により、第91回アカデミー賞の作品賞候補になった作品全てを見終えることができた。

この結果、アカデミー作品賞にノミネートされた作品で日本で劇場公開された作品は、第75回以降17年連続で全作品を劇場公開時期に映画館や試写会などで全て鑑賞したことになった。日本劇場未公開の2本は見ていないが、この約17年間に122本もアカデミー作品賞候補作品を見たってことか…。

今回の作品賞候補を改めて振り返ると、「グリーンブック」の作品賞受賞は妥当だと思った。各作品を様々な視点で加点したり、減点したりした上で、今の映画界や社会背景などの時代性も考慮すれば、作品賞はこれになるよなと思う。それを監督と主演が白人だからって受賞に難癖つけているスパイク・リーはおかしいと思う。

ただ、映画史的な視点も含めつつ、一番見るべきだと思った作品は「ROMA」かな。配信映画は映画なのか問題は映画史に残る出来事となったが、それを抜きにしても、一番スクリーンで見るべきだと思ったのはこれだし。

個人的には配信映画を映画扱いしないつもりはない。劇場公開しない映画を映画扱いしないなら、全米興行収入1億ドルを突破しても、日本ではDVDスルーとか配信オンリーになった作品は、海外では映画なのに、日本では映画ではないのかって話になるし、逆に海外では映画祭とかプレミアとかでの上映はあるにしろ、基本はテレビ放送向けの音楽ドキュメンタリーが日本では劇場公開されているしね。

問題なのは、賞レースのノミネート資格を得るためだけに形だけの劇場上映をしていることなんだよね。映画賞が欲しければ、きちんと劇場公開し、一定期間が経ってから配信すればいいと思うし、飾りだけの劇場公開しかする気がないなら、映画賞を狙うべきではなく、エミー賞とかゴールデン・グローブ賞のTVムービー部門を狙うべきだと思う。

ちなみに、一番面白いと思った作品は「ブラックパンサー」かな。ブルーレイも買ったし、ケンドリック・ラマーの主題歌は名曲だと思う。

でも、作品賞にノミネートされるほどの作品ではないよね。黒人キャスト中心のヒーロー映画=反トランプにつながるという理由で過大評価されているだけだと思う。

2018年度のアメコミ映画だったら、「デッドプール2」の方が遥かに、マイノリティーをきちんと描いていたしね。でも、アレは監督も主演も白人、しかも男性だから、反トランプにつながらないってことで無視したんでしょ。本当、今の米国映画界はおかしいよな…。


 
 
 

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