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ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -

  • 原田崇央
  • 2019年9月10日
  • 読了時間: 5分

放火事件でアニメファンや一部映画マニア以外にもその名を知られるようになった京都アニメーションの事件後初の劇場上映作品「ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝」を見た。

これを見て思い浮かべたことがある。

最近の京急衝突事故における、ネット上での「がんばれ京急」という論調にはすごく違和感を抱いている。 勿論、一番悪いのはトラックのドライバーだし、もしかしたら、ドライバーに余裕のない仕事をさせた要因は彼の所属会社にもあるかもしれない。また、ネット情報によると、現場付近でたむろしていた連中のせいで、ドライバーが逃げられなかったという説もあるらしい。 でも、京急に100%責任ないとは言えないでしょ。これまでに伝えられている情報だけでも不手際と言わざるを得ない要素がいくつかあるし。 それなのに、ネット上では「京急は悪くない。また、マスゴミが偏向報道している」という意見が多数を占めている。

それと同じ論調が、京アニ放火事件でも多いよなと思う。

結局、それって、何か事件が起きると、鉄道マニアとか、アニオタに対して偏見に満ちた報道をすることが多いマスコミに普段、腹を立てていることの延長線上で、マスゴミ憎しの思いで、マスコミの報道は間違っていると思いこんでいるだけだよね。マスコミが自分たちが好きな鉄道会社やアニメーション製作会社の問題点を批判するのが気にくわないだけでしょ。

京アニ放火事件における京アニの対応だって、おかしな点多いと思うよ。

放火事件で、報道はされていないので推測で語っているが、多分、生存者の中には、火傷とかの後遺症で指が動かなくなり、二度とアニメーターとしての仕事ができなくなった人って、いるんじゃないかなって思うんだよね。 なのに、事件後初めて劇場上映される作品が、義手の少女の物語、しかも、大惨事を生き延びた少女の物語っていうのは、どうなのよ?とは思った。

それから、マスコミに対して犠牲者の名前は公表するなとか言っていたくせに、本作の公開直前になって、「本作には犠牲者・負傷者もクレジットされています」って発表するのは、いかがなものかなとも思った。 犠牲者を公表するなと言っていたのは、本作の宣伝だったの? しかも、そのクレジットの仕方って、ハリウッド映画なんかでよく見る(邦画でも時々見かけるが)、製作中になくなった人に対する追悼コメント付きで名前が出るのではなく、普通にクレジットの中に担当パートの一人として混じっているだけなんだよね。 それを絶賛しているアニメファンが理解できない。

「日本人はおくゆかしいから、ハリウッドみたいに偽善的な追悼コメントなんてしないんだ」とでも言いたいのか?

そもそも、1年以上のキャリアがない人間は従来クレジットしないが、今回は特別にクレジットしたってのを美談のように、京アニもアニメファンも話しているのはおかしいだろ。 それって、どんだけこき使っても、若手はスタッフ扱いしていないってことだろ。美談にすんな!

ハリウッドだったら、どんな人間でも基本、クレジットされるもんな。スタントマンや研修中のスタッフでも名前出るからな。何を言っているんだかって感じだ。

というか、アニメーターだろうと、映画監督だろうと、ライターだろうと、テレビの情報番組ディレクターだろうと、表に出ていようが裏方だろうが、いわゆるクリエイティブ職の人間って、自分の死が報道されるのって名誉と思っている人が多いのでは?(AVとかエロ本とかの仕事をしている人は別かもしれないけれど)

だから、京アニが犠牲者の名前を報じるなと言ったことは、クリエイティブ職の人間の気持ちと反すると思うんだよね。 遺族はクリエイティブ職の人間ではないし、京アニ経営陣は現場感覚が薄れてしまっているから、そういうクリエイティブ気質が分からずに、個人情報保護みたいな発想しかないのだろうが。

そもそも、京アニに対してアニメファンは過大評価しすぎだと個人的には思っている。 確かに、画はきれいだし、心情描写も見事だし、好きな作品も多い。 でも、京アニ信者の中には、米国製アニメーションを見たことすらないのに、京アニ作品の動きは素晴らしいとか言っているの多いよね。 京アニ評価が高まった演出の一つに、「涼宮ハルヒの憂鬱」の学園祭のエピソードでの演奏シーンがあるけれどさ、音楽と画が合っているなんて、米国じゃ遥か昔から当たり前だったんだよね。それを何を絶賛しているんだかって、正直思っていた。多分、絶賛している人のほとんどは、1940年の「ファンタジア」を見ていないんじゃないのかな?って思う。真珠湾攻撃よりも前の時代に米国はやっているんだよね。

なので、自分は京アニ信者とは距離を置いているかもしれない。でも、純粋にストーリーとか、キャラクターとかで京アニ作品に好きなものが多いのも事実。

本作はイベント上映、つまり、OVA的な作りの作品だから、映画としての構成は物足りないが、うるっとくるシーンは結構あったと思う。 京アニ作品でいえば、去年公開された「リズと青い鳥」に通じるものが多かった。 友情以上同性愛未満みたいな関係とかね。 この「リズと青い鳥」は同時期に日本公開されたアカデミー作品賞ノミネート作品「君の名前で僕を呼んで」との親和性も語られることが多い作品だった。 そして、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝」は、「リズ」、「君の名前」両方に通じる作品だった。なので、作品自体は結構好きだ。

そういえば、みのりんの歌う主題歌のタイトルは登場人物の名前だったし、歌詞も名を呼ぶことについてだし、そして、名を呼ぶといえば、いやでも、放火事件の犠牲者を思い浮かべるな…。 まぁ、現実とアニメの世界が良くも悪くもリンクしてしまったなとは思うかな…。


 
 
 

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